「一生懸命練習しているのに、どうしても漢字が覚えられない」「音読をすると、どこを読んでいるのか分からなくなる」といった悩みを抱えていませんか?
読み書きの苦手さは、本人の努力不足や怠慢ではなく、脳の情報の処理の仕方に特徴がある発達障害(学習障害)が原因かもしれません。この記事では、読み書きに困難を抱える「ディスレクシア」や「ディスグラフィア」の特徴、そして周囲ができる具体的な支援策について詳しく解説します。
読み書きの苦手と発達障害の関係

読み書きの苦手さは、医学的には学習障害(LD)、あるいは限局性学習症(SLD)という診断名で呼ばれることがあります。これは、全般的な知的発達に遅れはないものの、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習スキルに著しい困難を示す状態です。
読字障害のディスレクシアとは
ディスレクシアとは、文字を読むことに困難が生じる学習障害の一種で、日本語では「読字障害」や「難読症」とも呼ばれます。
文字の一つひとつの音を認識すること(デコーディング)が難しいため、文章を読むのに非常に時間がかかったり、読み間違いが多くなったりするのが特徴です。知能には問題がないため、周囲からは「やる気がないだけ」と誤解されやすく、本人が自信を失ってしまうケースも少なくありません。
書字障害のディスグラフィア
ディスグラフィアとは、文字を書くことに困難が生じる状態で、「書字障害」や「失読症」に関連して語られることもあります。
単に「字が下手」というレベルではなく、文字の形を正しく認識して再現することや、文章を構成して書き出すことに強いストレスを感じます。漢字の細かい部分を間違える、鏡文字を書く、筆圧の調整がうまくいかないといった症状が見られます。
読み書き障害の定義と診断基準
読み書き障害は、脳の機能的な問題が原因と考えられており、視力や聴力の問題、あるいは教育環境の欠如によるものではありません。
診断には、アメリカ精神医学会の診断統計マニュアルであるDSM-5などの基準が用いられます。具体的には、標準的な教育を受けているにもかかわらず、読み書きの能力が実年齢や知能から期待される水準よりも著しく低い場合に診断が検討されます。
(参考:文部科学省 )
国語や英語など勉強全般に遅れや苦手意識を感じるお子さんを対象に、勉強ができない背景にある発達障害の兆候や具体的な接し方について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
ディスレクシアの見え方と特徴

ディスレクシアを抱える人々にとって、文字は私たちが普段見ているようには見えていない場合があります。その「見え方」の特性を理解することは、適切な支援の第一歩です。
文字が歪むや揺れる見え方の例
ディスレクシアの人の中には、文字が以下のように見えていると訴える人がいます。
このような視覚的なストレスがあるため、読書は非常に疲れやすく、集中力が続かない原因となります。
音読が遅いまたは読み飛ばす
文字と音がスムーズに結びつかないため、音読において特有の症状が現れます。
鏡文字や漢字の書き間違い
文字の形を空間的に把握することが苦手なため、書く際にも特徴的なミスが見られます。
鏡文字とは、左右を反転させて書いてしまう文字のことです。また、漢字の「へん」と「つくり」を入れ替えたり、線の数を間違えたりすることも頻繁に起こります。これらは視覚的な記憶や構成能力の特性によるもので、何度も書いて覚えるという従来の学習法では改善しにくいのが現実です。
読み書きの苦手を把握するリスト

自分や子供が読み書き障害に該当するかどうか、以下のチェックリストを参考に確認してみてください。
子供に見られる具体的な兆候
大人の仕事で直面する困難
ADHDや自閉症との併存症状
読み書き障害は、他の発達障害と併存することが多いのも特徴です。
ADHD(注意欠如・多動症)との関係
ADHDを併存している場合、不注意からくる読み飛ばしや、集中力の欠如によってさらに読み書きが困難になることがあります。
自閉スペクトラム症(ASD)との関係
ASDの特性として、特定のこだわりや感覚過敏がある場合、紙の白さや文字のコントラストが眩しくて読めないといった「視覚過敏」が影響しているケースもあります。
授業中や家庭学習ですぐに気が散ってしまうお子さんに向けて、家庭で実践できる原因別の具体的な改善法をまとめたこちらの記事も大変役立ちます。
病院の受診と診断を受ける手順

「もしかして?」と思ったら、一人で悩まずに専門機関へ相談することが大切です。
児童精神科や専門外来の探し方
子供の場合は「児童精神科」や「小児神経科」、大人の場合は「大人の発達障害外来」を標榜している精神科を受診するのが一般的です。
どこに行けばよいか迷う場合は、各都道府県にある発達障害者支援センターや、市区町村の保健センターに相談すると、専門の医療機関を紹介してもらえることがあります。
知能検査WISCによる特性把握
診断の過程では、WISC-V(ウィスク5)などの知能検査が行われることが多いです。
この検査では、言語理解、視空間、流動性推理、ワーキングメモリ、処理速度といった指標を測定します。全体のIQだけでなく、各指標の数値の差(ディスクレパンシー)を見ることで、その人の得意な情報の取り入れ方と、苦手な処理プロセスを客観的に把握できます。
(参考:国立成育医療センター )
情報の保持や処理に困難を抱えるお子さんに対して、脳の作業机を広げて記憶の保持力を高めるための具体的なトレーニング方法を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
家庭や学校で実践できる支援策

読み書きの苦手さを克服しようと無理に練習させるのではなく、ICTツールや環境調整を活用して「できない部分を補う」考え方が重要です。
ICTツールやタブレットの活用
現代では、テクノロジーを使って読み書きをサポートする手段が豊富にあります。
学校での合理的配慮と通級指導
障害のある児童生徒が、他の子供と同じように教育を受けられるよう調整することを合理的配慮と呼びます。
読み書き障害は治療で治るのか
読み書き障害は脳の特性であるため、薬を飲んで完全に「治る」という性質のものではありません。
しかし、適切なトレーニング(音韻訓練など)や、自分に合った代替え手段(ICT活用)を身につけることで、学業や仕事での困難を大幅に軽減することは十分に可能です。「治す」ことよりも「どう付き合うか」に焦点を当てることが、本人の生きやすさにつながります。
苦手以外の得意なことや強みの活用

ディスレクシアの人々は、読み書きが苦手な反面、他の分野で驚異的な才能を発揮することがあります。
豊かな創造性と多角的な視点
文字という断片的な情報に縛られないため、物事を全体像(ビッグピクチャー)で捉える能力に長けている人が多いと言われています。
独創的なアイデアを生み出す力や、複雑な問題を解決する直感力に優れ、起業家や芸術家として成功している当事者も少なくありません。「人とは違う視点を持っている」ことは、社会において大きな武器になります。
視覚的記憶や空間把握の能力
文字を読むのは苦手でも、図形や映像、立体的な構造を把握する能力が非常に高いケースがあります。
具体的な強みの例
これらの強みを活かせるデザイン、建築、エンジニアリング、映像制作などの分野では、読み書きの苦手さを補って余りある活躍が期待できます。
発達障害の診断は受けていないものの、学習につまずいてしまうグレーゾーンのお子さんに向けて、勉強が苦手になる原因と家庭でできる対策を知りたい方はこちらの記事もぜひご覧ください。
読み書きの特性や支援策、ICTツールの活用方法を知っても、「いざ我が子の学習をサポートしようとしても、毎日の家庭での指導をうまくやりきれるか不安」「うちの子の特性や読み書きのつまずきに寄り添って、個別で丁寧に指導してくれるプロの先生を見つけたい」とお悩みではありませんか?すべてをご家庭だけで抱え込んでしまう前に、専門のプロに頼ってみることも大切な選択肢です。
学研の家庭教師では お子様の脳の特性や発達の段階、学習のペースに合わせた完全マンツーマンの個別指導を行っています。一人ひとりの個性や読み書きのつまずきに寄り添った丁寧な指導とサポートを行っておりますので、一人で抱え込まずにまずはお気軽にご相談ください。
まとめ
読み書きの苦手さは、決して本人の努力が足りないせいではありません。ディスレクシアやディスグラフィアといった特性を正しく理解し、適切な支援やツールを取り入れることで、その人が持つ本来の能力を発揮できるようになります。
もし、あなたやあなたのお子さんが読み書きに苦しんでいるのなら、まずは専門機関に相談し、特性を把握することから始めてみてください。「読み書きができない=能力がない」ではないということを忘れず、得意なことを伸ばしていく道を一緒に探していきましょう。






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