医学部の面接は「答え方」や「受け答えの印象」で合否が左右される重要な試験のため、「どんな質問が来るの?」「志望動機ってどう言えばいいの?」「マナーに自信がない…」と悩む受験生も多いのではないでしょうか。筆記試験に比べて対策が後回しにされがちな面接ですが、合格者の多くは入念に準備しているものです。本記事では、頻出質問や回答例、合格者が実践した練習法やNG回答の回避法など、医学部面接に関わるあらゆる情報を網羅的に解説します。
医学部受験の面接は何を評価されるのか

医学部入試の特徴の一つに、公立・私立を問わず多くの大学で「面接」が課される点が挙げられます。この面接は、知識の確認の場ではなく、受験生が持つ「医師としてのポテンシャル」を見極めるための試験です。
評価軸は志望理由の深さや自己分析力、対話能力、そして人間性全般に及びます。中でも、倫理観や他者への配慮、協調性、論理的思考力といった、学力試験では測定不能な資質が重視される傾向にあります。学力が拮抗する受験生同士の最終的な差を決定づける重要な要素であり、合否に直結するケースも少なくありません。面接の評価基準を正確に把握し、徹底した自己分析と対策を行うことが、医学部合格の鍵となります。
医学部面接で頻出する10の質問と回答のポイント

医学部面接では、定番の質問にどう答えるかが合否を左右するため、ここでは頻出する10の質問ごとに、回答のポイントを解説していきます。以下を確認し、自分の経験や考えをどう伝えるか明確にしてみましょう。
志望動機・大学の志望理由
医学部を志望した理由やその大学を選んだ根拠は、面接でほぼ確実に問われるため、自分の経験や価値観に基づいた動機を語ることが重要です。
たとえば「地域医療に貢献したい」と考えた背景や、「貴学のカリキュラムに魅力を感じた」など具体的に伝えましょう。「なんとなく有名だから」といった曖昧な理由や、大学の特色と無関係な内容は避け、志望理由を説明する際は、大学独自の特徴と自分の目標を結びつけることがポイントです。
理想の医師像・医療観
理想とする医師像や自分の医療観を語るときは、単なる理想論で終わらず、自分の体験や価値観と結びつけることが大切です。
たとえば「患者の声に耳を傾けられる医師」などと答える場合、そのように感じた原体験や具体的な事例を交えると説得力が増すだけでなく、人間性や将来性まで見てもらいやすくなるでしょう。また、医療観は「命の重さ」や「チーム医療」など、時代に合ったテーマも意識すると好印象です。
長所・短所
長所・短所は、医師に求められる資質と結びつけて説明することが重要です。
たとえば「粘り強さ」が長所であれば、部活動や受験勉強で発揮したエピソードを交えましょう。短所も「慎重すぎる」など改善に向けて努力している姿勢を示すと好印象になります。『私の長所は継続力です。高校では毎日欠かさず自習を続け、成績を上げました。この継続力は、医師として常に新しい知識や技術を学び続ける姿勢にも活かせると考えています。』など、抽象的な言葉ではなく行動や成果を交えて話すと伝わりやすくなるでしょう。
高校時代の経験・成長エピソード
高校時代の経験を問う質問では、「何を経験したか」より「その経験から何を学んだか」に重点を置きましょう。
部活動での挫折や文化祭のリーダー経験などを通して、困難を乗り越えたエピソードを整理し、自分の成長につなげて伝えるのがポイントです。『文化祭の実行委員長として、メンバー間の意見調整に苦労しましたが、相手の立場を理解する姿勢を学びました。』など、成果だけでなく過程にも焦点を当ててください。
医療ニュース・医療系書籍に関する質問
医療ニュースや書籍についての質問では、自分の関心分野とどう結びつけて考えたかを示すことが重要です。
たとえば「在宅医療の拡充に関する記事を読み、地域医療への関心が深まった」といった形で、自分の考えや今後の学びにどう影響したかを語りましょう。タイトルだけでなく、なぜそれが印象に残ったのか、どんな気づきがあったかを明確にすることで、主体性や思考力が伝わります。
併願校・再受験理由
併願校や再受験理由を聞かれた際には、志望校に対する本気度を損なわず、前向きな姿勢を伝えることが重要です。
たとえば『併願校も特色のある教育方針に魅力を感じて選びました』や『前回の反省を活かし、今年は面接対策に重点を置きました。』など、誠実さと改善意識を示すようにしましょう。単なる滑り止め扱いと取られないよう、どの大学でも真剣に学びたいという姿勢を見せるのがポイントです。
尊敬する人物
尊敬する人物については、その人のどんな点に惹かれたか、そして自分がどうありたいと感じているかを語ることが大切です。医療関係者であれば理想像につながりますし、家族や恩師などでも構いません。
たとえば『高校の担任の先生が、常に生徒に寄り添っていた姿に感銘を受けました。』という話は、自分の価値観や人間性を伝える手段になります。話題を通して、自分の思いや将来像をしっかりと伝えてください。
趣味・特技・最近感動したこと
趣味や特技、最近感動したことを聞かれた場合は、自分の人柄や価値観を自然に伝えるチャンスです。
単に「読書」や「ピアノが得意」と言うだけでなく、『読書では特に医療エッセイに惹かれ、医師の実像に触れるきっかけになりました。』など、体験や気づきを含めましょう。感動したエピソードでは、自分の感性や他者への関心を表現すると好印象です。
志望診療科・将来の進路
志望診療科や将来像を問われたときは、現在の興味関心と将来の展望を無理なくつなげることがポイントです。
たとえば『高齢化が進む地域での在宅医療に関心があり、将来は総合診療医として地域に貢献したい』など、動機に納得感があり、今後の学びにどうつなげるかが見える内容が望ましいです。現時点で診療科が決まっていなくても、興味の方向性を具体的に語れると良いでしょう。
家族構成・親の職業に関する質問
家族構成や親の職業についての質問は、プライバシーに踏み込みすぎないよう注意しつつ、自分の動機や価値観につなげる回答が理想です。
たとえば『両親が介護職に就いており、幼いころから医療と福祉の現場を身近に感じていました。』といった形で、自分の選択の背景を自然に伝えると良い印象を与えます。情報を出しすぎず、誠実で簡潔に答えるバランスが大切です。
医学部面接で差がつく!回答の質を上げる“3つの工夫”

医学部面接で合否を分けるのは、質問への答え方そのものです。ここでは、回答の質を高めるための3つの工夫【具体性】【一貫性】【医師視点】について詳しく解説します。実際の回答例も交え、明日の面接練習でも使える実践的なテクニックを紹介します。
回答の“具体性”を意識する
面接官は面接であなたの本音を見ています。抽象的な答えや一般論だけでは、面接官の心に響きません。大切なのは、実体験や具体的なエピソードを交えて話すことです。
たとえば「困難を乗り越えた経験があります」と言うだけでなく、「高校時代、部活動で怪我をしてリハビリに苦労しましたが、その過程で医療従事者の支えに感謝し、自分も人を支えたいと思いました」と、具体的な状況や感情、学びを盛り込むことで説得力が大きく増します。
また、数字や固有名詞、時期などを入れると、よりリアルな印象を与えることができます。面接官は「その人自身の物語」を知りたがっているため、体験に裏打ちされた具体的な言葉を意識して答えましょう。
回答に“一貫性”を持たせる
志望動機、将来の進路、価値観といった各回答に一貫性がないと、準備不足や本気度の低さを疑われてしまいます。
たとえば「地域医療に貢献したい」と志望動機で述べたのに、将来の進路で「最先端の研究医を目指したい」と答えると、面接官は違和感を覚えます。回答を準備する際は、自分の過去の経験→学び→現在の志望→将来の展望、という流れが一貫しているかチェックしましょう。
面接練習の際は、想定質問ごとに「他の回答と矛盾していないか」を必ず確認し、第三者に見てもらうのも有効です。自分の軸を明確にし、どの質問にもブレない姿勢を示しましょう。
回答へ“医師視点”を盛り込む
医学部志望者として、患者や家族への配慮、医療倫理への意識が伝わる回答を意識しましょう。
たとえば「患者さんの立場に立ち、寄り添う医師になりたい」と述べる場合、単なる理想論で終わらず、「以前、祖母の介護を通じて医療現場の大変さと温かさを知りました。患者さんや家族の不安に寄り添う医師を目指したいと強く思っています」と具体的な経験や気づきを加えると、医師としての視点が明確に伝わります。
また、「医療はチームで行うもの」「命の重さを常に意識している」など、医療現場の現実や倫理観を踏まえた発言も好印象です。
面接官に好印象を与える基本マナーと振る舞い

面接官に好印象を与えるためには、内容だけでなく、身だしなみや立ち居振る舞い、話し方といった「非言語コミュニケーション」も極めて重要です。意外と見落としがちなポイントも多いため、細部まで意識して面接本番に臨みましょう。
身だしなみ・挨拶・姿勢の基本
第一印象は数秒で決まります。服装は高校の制服、またはリクルートスーツを着用し、髪型や爪は清潔に整えてください。
入室時にはドアをノックし、面接官の指示を待ってから「失礼します」と一礼して入室します。
座る際は背筋を伸ばし、両手は膝の上に置きましょう。
挨拶は明るくはっきりと行い、目線は面接官の顔に向けます。
退出時には「ありがとうございました」と丁寧に一礼し、ドアを静かに閉めるまで気を抜かないことが大切です。
話し方・敬語・質問時の応答マナー
話すスピードはややゆっくり話すことを意識し、声の大きさは普段より少し大きめに。敬語は正しく使い、語尾を伸ばさずに簡潔に話しましょう。
また、普段とは異なる面接特有のコミュニケーション方法も身に着けておく必要があります。質問が聞き取れなかった場合は「恐れ入りますが、もう一度お願いできますか」と丁寧に聞き返すこと。想定外の質問には、すぐに答えられなくても「少し考える時間をいただいてもよろしいでしょうか」と落ち着いて対応し、焦らずに自分の考えをまとめてから答えることが大切です。
集団面接やMMIでの立ち居振る舞いと配慮
集団面接やグループディスカッションでは、他の受験生の発言にしっかり耳を傾け、相手の意見を尊重する姿勢を見せましょう。他人の発言を遮らず、発言が重複した場合も自分の言葉で丁寧に伝えれば問題ありません。
討論形式の場合は、他者の意見を踏まえて自分の考えを述べること、困っている受験生がいれば自然にフォローすることも高評価につながります。自分の意見を主張するだけでなく、協調性や思いやりをアピールできる行動を心がけましょう。
また、グループディスカッションでは議論が停滞することもあります。その際は、進行を促す質問を投げかけたり、時間配分を意識する発言をしたりと、議論を円滑に進めるための貢献を意識しましょう。自然な形でリーダーシップや協調性を発揮することが、高評価につながります。
模擬面接で実力を伸ばす練習法と改善サイクル

模擬面接は、実際の面接本番で自信を持って臨むための最良の練習法です。ここでは、模擬面接の効果的な実施方法と、改善サイクルを回すための具体的なポイントを詳しく解説します。自宅でもできる実践法を取り入れ、着実に面接力を高めましょう。
模擬面接の準備と実施ステップ
模擬面接を始める際は、まず受験する大学や奨学金の面接形式(個人・集団・MMIなど)を確認し、よく聞かれる質問リストを作成しましょう。家族や友人、学校の先生に協力を依頼し、入退室の所作や挨拶、質問応答、逆質問まで一連の流れを本番同様に練習します。練習では声の大きさや姿勢、アイコンタクトなど非言語的な要素にも注意を払いましょう。繰り返し実践することで、緊張感や面接独特の雰囲気にも慣れることができます。模擬面接の後は、協力者から具体的なフィードバックをもらい、改善点を一つずつ修正することが重要です。
録画・フィードバックを活かす方法
模擬面接の様子をスマートフォンやビデオカメラで録画し、後から自分の表情や話し方、クセを客観的に確認しましょう。録画を見返すことで、自分では気づきにくい話し方や姿勢の癖、語尾の弱さ、目線の動きなども把握できます。
練習後は協力者から具体的なアドバイスをもらい、何が良かったか、どこが改善点かを明確にします。指摘された点を意識して再度練習し、修正を重ねることで、面接本番での自信と安定感が高まります。録画とフィードバックを定期的に繰り返すことが、着実な成長につながります。
オープンキャンパスや面談で得られる“本番ネタ”
オープンキャンパスや大学教職員との面談は、面接で使える具体的なエピソードを得る絶好の機会です。
たとえば「オープンキャンパスで在校生から地域医療実習の話を聞き、医療現場のリアルな課題を知った」「面談で教授から研究室の取り組みを直接伺い、志望度がさらに高まった」など、実体験に基づくエピソードを回答に盛り込むと説得力が増します。大学独自のカリキュラムや雰囲気、現地で感じた印象を自分の言葉で語れるように準備しておくと、面接官に強い印象を残すことができます。
面接時に自分の言葉で話せるようになる練習法

用意した原稿をそのまま読むのではなく、“自分の言葉”で自然に話せるようになることが、面接突破のカギです。ここでは、暗記に頼らず、自分らしい表現力と対話力を身につけるためのトレーニング法を紹介します。
ペアワークで「自分語り」を訓練する
友人や家族とロールプレイ形式で面接練習を行うことで、即興的に自分の言葉で答える「自分語り」の力が身につきます。お互いに質問を出し合い、その場で考えて答えることで、暗記に頼らず柔軟に話す力が鍛えられるでしょう。
さらに、相手から追加質問や感想をもらうことで、伝わりやすい表現ができ、話し方の幅も広げられます。ペアワークは一人での練習よりも緊張感があり、他者の視点から具体的なフィードバックが得られるため、本番の面接でも臨機応変に対応できる自信がつくだけでなく、継続して行うことで、自己表現力が確実に向上します。
回答ノート・日記で言語化力を高める
毎日短時間でも、自分の考えや感じたことをノートや日記に書き出す「言語化トレーニング」を続けることで、面接で必要な表現力を自然に身につけることが可能です。
よく聞かれる質問について、自分なりの答えを文章にまとめることで、思考が整理され、話す内容が明確になります。書いた内容を音読したり、録音して聞き返すことで、表現の癖や改善点にも気づけるはずです。日々の積み重ねが自信につながり、どんな質問にも自分の言葉で答えられる力が養われるうえ、継続することで、面接本番でも落ち着いて自分を表現できるようになるでしょう。
面接のNG回答・逆質問で落ちないための注意点
医学部面接では、内容や態度によっては評価を大きく下げてしまうNG回答や、逆質問で失敗するケースも少なくありません。ここでは、失点を防ぐための実践的な注意点と、印象を上げるための逆質問のコツを詳しく解説します。
よくあるNGフレーズと改善例
面接で「御校でなければ」「なんとなく」「よく分からない」「とりあえず」などの曖昧な表現や、ネットや親の受け売りと受け取られる回答は避けましょう。
たとえば「父が医師だから」「ドラマを見て憧れた」だけでは動機が弱く、主体性が伝わりません。改善例として、「父が医師であることをきっかけに、実際に医療現場を見学し、自分も人の役に立ちたいと強く感じた」など、きっかけから自分の考えや決意に至るプロセスを具体的に語ると、熱意や主体性がしっかり伝わります。自分の言葉で、経験や考えを掘り下げて話すことが大切です。
逆質問の例と印象を上げるコツ
面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれた際、「特にありません…」で終わってしまうと、印象が薄くなります。逆質問は自分の興味や準備力をアピールする絶好のチャンスです。
「初期研修で多く経験できる手技にはどんなものがありますか?」「地域医療実習で印象的だったエピソードがあれば教えてください」など、ネットで調べるだけでは分からない、大学の特色や面接官自身の考えに触れる質問を心がけましょう。
まとめ
医学部面接は、知識を問うだけの場ではなく、あなたの人間性と未来の医師としての資質が問われる真剣な対話の場です。頻出質問への深い考察、洗練されたマナー、そして模擬面接で培った対応力。これまでの準備の一つひとつが、本番で揺るぎない自信となるはずです。面接では、積み重ねてきた努力を信じ、あなたの言葉で、堂々とその熱意を伝えてください。
合格への扉は、確かな準備とあなたらしさの発揮によって開かれます。