医学部受験では、他学部に比べて求められる科目数や試験方式が複雑で、「どの科目を選べばいいのか分からない」と悩む受験生や保護者も少なくありません。国公立と私立では受験方式や配点にも大きな違いがあり、得意科目や志望校に応じた戦略的な科目選びが合否を左右します。
本記事では、医学部受験に必要な科目を網羅的に整理し、大学ごとの特徴や注意点、出願時の戦略まで丁寧に解説します。
国公立医学部で求められる受験科目と試験方式の特徴

国公立医学部の受験は、他学部と比べて科目数や試験方式が複雑であり、受験生や保護者が迷いやすい分野です。共通テストと二次試験の二段階選抜方式が主流となっており、それぞれの役割や特徴、戦略的な準備のポイントを押さえることが合格への第一歩となります。
国公立医学部は共通テスト+二次試験の“二段階選抜”が基本
国公立医学部の入試は、大学入学共通テストと各大学が実施する二次試験の合計点で合否を判定する二段階選抜方式が基本です。共通テストには「足切り」(第一段階選抜)の基準が設けられる大学が多く、これを突破しなければ二次試験を受験できません。
重要なのは、共通テストの得点は足切りだけでなく最終合否判定にも影響する点です。配点比率は大学ごとに異なり(例:共通テスト:二次試験=4:6や3:7など)、志望校ごとのバランスを踏まえて対策することが重要です。
共通テストで必要な科目と配点のポイント
国公立医学部では、共通テストで英語・数学(ⅠA・ⅡB)・理科2科目(物理・化学・生物から選択)・国語・社会1科目(地歴または公民)の5教科7科目が課されるのが一般的です。
さらに2025年度以降は、新たに「情報」が導入され、6教科8科目を課す大学が多くなります。この情報科目の配点は大学によって異なりますが、総合点の1割前後を占める大学もあり、対策の重要性が高まっています。
医学部は他学部よりも英語・数学・理科の配点が高い傾向にあり、これらで高得点を取ることが合格の鍵です。一方、国語や社会の配点は低めの大学も多く、社会は短期間で伸ばしやすい科目を選ぶなど、効率的な戦略が求められます。
二次試験では英数理が中心だが大学ごとに傾向が異なる
国公立医学部の二次試験は、英語・数学・理科2科目が基本ですが、大学によって傾向や科目指定が異なります。
例として、金沢大学・九州大学・愛媛大学などでは「物理+化学必須」とする場合があり、生物選択ができません。逆に旭川医科大学・秋田大学・島根大学・徳島大学・宮崎大学などでは理科を課さず、英語と数学、面接のみという形式もあります。また、東京大学・京都大学・名古屋大学などでは二次試験で国語を課すケースもあります。
多くの大学では記述式や論述問題が中心で、数学では証明や高度な応用問題、理科では実験考察や図示・記述説明などが出題されます。英語では医療系長文の読解や要約、自由英作文を課す大学もあり、専門的な語彙や論理的な表現力が必要です。
私立医学部で求められる受験科目と試験方式の特徴

私立医学部は、大学ごとに試験方式や配点が大きく異なります。出題傾向や科目の比重など、志望校選びや対策に直結する情報を正確に把握し、個別の戦略を立てることが重要です。
私立医学部の試験方式は大学によって大きく異なる
私立医学部の一般入試では、英語・数学・理科2科目が基本となっていますが、試験形式は大学ごとに大きく異なります。
たとえば、金沢医科大学はマークシート式中心で出題されるのに対し、順天堂大学や慶應義塾大学では記述式の問題が重視される傾向があります。藤田医科大学のようにマーク式と記述式を組み合わせている大学もあり、形式ごとの対策が必要です。
また、理科の選択科目にも「物理・化学のみ可」「生物不可」など制限がある大学もあるため、志望校の募集要項を事前にしっかり確認することが不可欠です。出題傾向や難易度は大学によって大きく異なるため、過去問を通じて早い段階で形式に慣れ、自分に合った受験校を選ぶことが重要です。
大学ごとに配点バランスが異なり、得意科目を活かしやすい
私立医学部では、英語・数学・理科の配点バランスが大学ごとに異なります。例えば、英語の配点が高い大学もあれば、数学を重視する大学、また3科目を均等に評価する大学も存在します。
この配点の違いは、受験生が自分の得意科目を活かして出願校を選ぶ上で大きなメリットとなります。自分の強みが評価されやすい大学を選べば、合格の可能性を高めることができます。また、配点傾向の異なる大学を併願すれば、リスク分散にもつながります。
年度によって配点や科目指定が変更されることもあるため、最新の入試要項を必ず確認し、出願計画を立てる必要があります。自分の強みを最大限に活かせる大学選びが、医学部合格への大きな一歩となります。
非学力試験(小論文・面接・英語外部検定など)の位置づけ
私立医学部の入試では、学力試験に加えて小論文や面接、英語外部検定のスコアが合否に影響するケースが多くなっています。
小論文は医療倫理や社会問題、時事問題などがテーマとなり、論理的な思考力や表現力、医師としての適性が問われます。面接は形式的に実施する大学もあれば、人物評価を重視し、医師としてふさわしい資質や人間性を深く問う大学もあります。面接や小論文の評価が著しく低いと、学力試験の得点が高くても不合格となることもあるため、軽視はできません。
また、英語外部検定(英検・TOEFLなど)のスコアが加点対象となる大学も増えており、出願時に有利に働くことがあります。
非学力試験を「形だけ」と捉えず、医師としての資質や表現力をしっかりアピールできるよう、十分な準備と対策をして臨むことが大切です。
少ない科目で受験できる医学部はある?出願戦略としての活用ポイント

私立医学部の中には、一般的な「英語・数学・理科2科目」の4科目型ではなく、3科目以下で受験できる大学も存在します。科目負担が少ないため、得意科目に特化したい受験生や、国公立との併願で対策科目を絞りたい受験生にとっては戦略的な選択肢となり得ます。
ただし、科目数が少ない分、1科目あたりの比重が非常に重くなり、1つのミスが合否に直結します。また、受験生が集中しやすいため、競争は極めて激しくなる傾向があります。
3科目以下で受験可能な私立医学部の具体例
私立医学部の「少科目型」入試は大学や方式によって異なります。以下は代表的な大学の入試形態の一例です(一般選抜の前期・後期に絞って掲載)。※必ず最新の募集要項をご確認ください。
大学名 | 入試方式 | 必要科目・内容 |
帝京大学 | 一般選抜 | 英語、数学、国語、物理、化学、生物から3科目選択 |
東海大学 | 一般選抜 | 英語、数学、理科(物理・化学・生物から1科目) |
金沢医科大学 | 一般後期 | 英語、数学、小論文、面接 |
科目数が少ない医学部を選ぶ際の注意点
科目数が少ないと対策の負担が軽いように感じますが、実際には多くの受験生が集中するため、競争率は非常に高くなります。合格のためには高得点が必須であり、1問の失点が合否に直結する「一発勝負」の厳しい試験です。
出願前には、以下の傾向と注意点を必ず押さえておきましょう。
- ・高得点勝負と独特な出題傾向
出題範囲は基礎から応用までと幅広く、大学独自の難問・奇問が出されることも少なくありません。併願校との対策がしにくいケースもあるため、志望校の過去問研究を徹底し、傾向を掴むことが不可欠です。 - ・併願戦略の難しさ
科目数が少ない分、得意科目の失敗を他でカバーするのが難しく、得点差がつきやすい入試です。安定した合格を目指すには、一般的な4科目型の大学も併願するなど、リスク分散を意識した出願戦略が重要になります。 - ・入試情報のこまめな確認
私立医学部は、年度によって試験科目や配点が変更される可能性があります。必ず大学の公式サイトで最新の募集要項を確認し、正確な情報に基づいて対策を進めましょう。
少科目型の私立医学部に向いている受験生の特徴
少科目型の私立医学部は、得意科目に特化して高得点を狙いたい受験生や、共通テスト対策に十分な時間を確保できない受験生に向いています。短期間で集中的に学習したい人や、苦手科目を極力避けたい人にとっても有効な選択肢です。
一方で、基礎学力や全体の得点力に不安がある場合は、少ない科目での失点が合否に直結するためリスクが高くなります。模試の成績や過去問の傾向をもとに、自分の実力と志望校の特徴を冷静に見極めることが重要です。感覚に頼らず、データや実績に基づいて戦略的に出願を判断しましょう。
まとめ
医学部受験では「英語・数学・理科2科目」が中心となり、国公立と私立で受験科目や配点、試験方式に大きな違いがあります。自分の得意科目や志望校の配点・出題傾向をしっかり分析し、戦略的に科目選びと対策を進めることが合格への鍵です。
早めの情報収集と計画的な準備が合格を近づけます。自分に合った受験科目と出願校を見極め、着実に対策を進めましょう。