「将来は地元、岐阜県の医療に貢献したい」「医学部に進学して医師になりたいけど、一般選抜だけでは不安…」
岐阜大学医学部を目指すあなたにとって、「地域枠」は合格の可能性を広げる大きなチャンスかもしれません。しかし、その一方で「出願できる条件は?」「共通テストで何点くらい取ればいいの?」「卒業後の義務って具体的に何?」といった疑問や不安も多いのではないでしょうか。
この記事では、岐阜大学医学部の地域枠推薦入試について、専門家の視点から徹底的に解説します。出願資格の条件から、気になるボーダーラインや倍率、面接対策、そして卒業後のキャリアまで、あなたが知りたい情報を網羅的にまとめました。
この記事を読めば、岐阜大学医学部の地域枠があなたにとって最適な選択肢なのかを判断し、自信を持って受験準備を始めることができます。
地域枠の制度や仕組みをさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
【岐阜大学医学部】「地域枠」とは?

まず、岐阜大学医学部の「地域枠」とは、将来、岐阜県の地域医療を支える医師を育成することを目的とした、学校推薦型の選抜制度です。一般選抜とは異なる特別な入試枠で、合格した学生は卒業後、一定期間、岐阜県内の指定された医療機関で勤務することが求められます。
この制度は、医師不足が課題となっている地域に、意欲と使命感を持った医師を確保するために設けられています。
地域枠と一般選抜との違い
地域枠と一般選抜の最も大きな違いは、選抜方法と卒業後の義務の有無です。
項目 | 地域枠(学校推薦型選抜Ⅱ) | 一般選抜(前期日程) |
---|---|---|
選抜方法 | 書類審査、共通テスト、面接 | 共通テスト、個別学力検査(数学・理科・英語)、面接 |
出願資格 | 出身高校、居住地、評定平均などの条件あり | 主に学力要件のみ |
卒業後の義務 | あり(岐阜県内での一定期間の勤務) | なし |
募集人員 | 比較的少ない(岐阜県地域枠+全国枠) | 比較的多い |
併願 | 他の国公立大学の学校推薦型選抜との併願は不可 | 他大学の推薦入試等との組み合わせは可能 |
地域枠は、学力だけでなく、地域医療への貢献意欲や医師としての適性が総合的に評価されるのが特徴です。
地域枠のメリット・デメリット
地域枠への出願を検討する際は、メリットとデメリットの両方を正しく理解しておくことが重要です。
- ・メリット
- ・デメリット
- ・卒業後の勤務地や期間が制限される: 卒業後、一定期間(原則9年間)は岐阜県が指定する医療機関で勤務する必要があり、自由にキャリアを選ぶことはできません。
- ・厳しい出願資格: 出身高校の所在地や評定平均など、誰でも出願できるわけではない厳しい条件が課せられています。
- ・義務を果たせない場合のリスク: 万が一、義務年限を果たせなかった場合は、貸与された修学資金を一括で返還する必要があります。
- ・一般選抜とは異なる評価軸で選考される: 一般選抜に比べて個別学力検査がないため、共通テストと面接、そして地域医療への熱意で勝負できる可能性があります。
- ・岐阜県からの手厚いサポート: 岐阜県の「医学生修学資金」の貸与対象となり、経済的な負担を軽減しながら学業に専念できます。(※義務年限を果たすことで返還が免除されます)
- ・明確なキャリアパス: 卒業後のキャリアプランがある程度定まっているため、将来設計を立てやすいという側面もあります。
募集人員(岐阜県地域枠・全国枠)
岐阜大学医学部の地域枠には、出願資格が異なる2つの枠があります。
- ・岐阜県地域枠:23名
- ・全国枠:5名
(参考:岐阜大学 令和7年度入学者選抜要項)
岐阜県地域枠は、岐阜県にゆかりのある受験生を対象としています。一方、全国枠は出身地を問わず、岐阜県の地域医療に貢献したいという強い意志を持つ受験生を全国から募集するものです。
【岐阜大学医学部】地域枠の出願資格と条件

自分に出願資格があるかどうか、以下の項目でしっかり確認しましょう。特に岐阜県地域枠は条件が細かく定められています。
出身高校・居住地の要件
岐阜県地域枠
- ・岐阜県内の高等学校もしくは中等教育学校を卒業見込みの者
- ・上記の学校を卒業し、かつ、保護者(親権者)が令和6年4月1日以前から出願時まで引き続き岐阜県内に居住している者
全国枠
- ・出身高等学校等の所在地、現住所地は問いません。
評定平均値の基準
岐阜県地域枠・全国枠ともに、調査書の全体の学習成績の状況(評定平均値)がA段階(4.3以上)に属する者と定められています。日々の学業への取り組みが非常に重要です。
現役・既卒(浪人)の可否
- ・岐阜県地域枠 現役生のみが出願可能です。
- ・全国枠 現役生、または1浪生(令和6年3月卒業の者)まで出願が可能です。
卒業後の義務に関する誓約
地域枠で合格・入学する学生は、卒業後のキャリアについて以下の内容を誓約する必要があります。
- ・卒業後、直ちに岐阜大学医学部附属病院または岐阜県厚生農業協同組合連合会が設置する臨床研修病院で臨床研修(2年間)を行うこと。
- ・臨床研修修了後、引き続き7年間、岐阜県知事が指定する公的医療機関等で医師として勤務すること。
つまり、合計で9年間、岐阜県の医療に従事することが求められます。この義務を理解し、受け入れられることが出願の大前提となります。
【岐阜大学医学部】ボーダーラインと倍率の推移

地域枠の合格を勝ち取るために、過去の入試データから難易度を把握しておきましょう。
共通テストのボーダーライン推移
大手予備校のデータによると、岐阜大学医学部地域枠の共通テストのボーダーラインは、例年80%前後で推移しています。
年度 | 共通テストボーダー得点率(目安) |
---|---|
2024年度 | 80% |
2023年度 | 81% |
2022年度 | 82% |
もちろん、これはあくまで目安です。面接や書類審査の結果も加味されるため、ボーダーラインを少し下回っていても合格する可能性はありますし、逆に上回っていても安心はできません。まずは8割以上の得点を目指して対策を進めることが重要です。
過去3年間の倍率(志願者数・合格者数)
実際の志願者数や倍率を見てみましょう。
岐阜県地域枠(募集人員:23名)
年度 | 志願者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
2024年度 | 41名 | 23名 | 1.8倍 |
2023年度 | 42名 | 23名 | 1.8倍 |
2022年度 | 44名 | 23名 | 1.9倍 |
全国枠(募集人員:5名)
年度 | 志願者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
2024年度 | 28名 | 5名 | 5.6倍 |
2023年度 | 29名 | 5名 | 5.8倍 |
2022年度 | 28名 | 5名 | 5.6倍 |
(出典:岐阜大学 入学者選抜に関する情報開示)
岐阜県地域枠の倍率は約1.8倍と比較的落ち着いていますが、これは出願資格が厳しいことが一因です。一方、全国枠は5倍を超える高い倍率となっており、全国から優秀な受験生が集まる厳しい戦いであることが分かります。
合格者の最低点・平均点
岐阜大学では、合格者の共通テスト成績について、最高点、平均点、最低点を公表しています。
令和6年度(2024年度)入試結果
- ・岐阜県地域枠
- →共通テスト平均点:731.9点 / 900点(約81.3%)
- →共通テスト最低点:693.0点 / 900点(約77.0%)
- ・全国枠
- →共通テスト平均点:754.8点 / 900点(約83.9%)
- →共通テスト最低点:738.0点 / 900点(約82.0%)
(出典:岐阜大学 令和6年度入学者選抜個人成績等の開示)
このデータから、合格するためには最低でも77%以上、安定して合格を目指すなら82%以上の得点が一つの目標となることが分かります。
高いボーダーに不安を感じても、一人で抱え込む必要はありません。プロの指導を受ければ、自分に合った効率的な勉強法が見つかります。まずはご相談ください。
【岐阜大学医学部】選抜方法と試験内容

地域枠の選抜は、2段階で行われます。
第1次選抜(書類審査・共通テスト)
まず、大学入学共通テストの成績と、提出書類(調査書、推薦書、志望理由書)の内容を総合的に審査し、第1次選抜の合格者が決定されます。募集人員に対して、岐阜県地域枠は約2倍、全国枠は約3倍の人数が第1次選抜を通過します。
第2次選抜(面接)の内容と過去の質問例
第1次選抜の合格者に対して、第2次選抜として個人面接が課されます。面接は15分程度で、複数の面接官によって行われます。
評価のポイントは以下の通りです。
- ・医師としての適性
- ・コミュニケーション能力
- ・地域医療への貢献に対する強い意欲
- ・論理的思考力や表現力
過去に聞かれた質問の例
- ・なぜ医師になりたいのか?
- ・なぜ岐阜大学医学部を選んだのか?
- ・なぜ地域枠で受験しようと思ったのか?
- ・岐阜県の医療について知っていること、課題だと感じることは?
- ・高校生活で力を入れたことは何か?
- ・あなたの長所と短所は?
- ・チーム医療において大切だと思うことは?
- ・最近気になった医療ニュースは?
付け焼き刃の知識ではなく、自己分析と岐阜県の地域医療への深い理解に基づいた、自分の言葉で語れるように準備しておくことが不可欠です。
岐阜大学地域枠でも重視される面接は、質問内容こそ大学ごとに異なりますが、評価される観点は共通しています。全国の医学部でよく聞かれる質問や答え方のポイントはこちらに整理しています。
共通テストの科目と配点
共通テストは5教科7科目、合計900点満点で評価されます。
教科 | 科目 | 配点 |
---|---|---|
国語 | 国語 | 200点 |
地理歴史・公民 | 世界史B, 日本史B, 地理B, 「倫理, 政治・経済」から1科目 | 100点 |
数学 | 「数学Ⅰ・数学A」と「数学Ⅱ・数学B, 数学C」 | 200点 |
理科 | 「物理」「化学」「生物」から2科目 | 200点 |
外国語 | 英語(リーディング160点、リスニング40点に換算) | 200点 |
合計 | 900点 |
提出書類(推薦書・志望理由書)のポイント
書類選考も合否を左右する重要な要素です。
- ・推薦書: 高校の先生に作成を依頼します。あなたの学業成績や課外活動、人物像などを客観的に評価してもらうための書類です。日頃から先生と良好な関係を築いておくことが大切です。
- ・志望理由書: あなた自身をアピールする最も重要な書類です。「なぜ医師になりたいのか」「なぜそれが岐阜大学でなければならないのか」「地域枠で入学し、岐阜県の医療にどう貢献したいのか」という3つの点を、具体的なエピソードを交えて論理的に記述しましょう。あなたの熱意を伝える絶好の機会です。
志望理由書は合否を左右する最重要書類です。例文やNG例を通して正しい書き方を学びたい方は、こちらの記事で徹底解説しています。
【岐阜大学医学部】卒業後のキャリアと義務年限

地域枠で入学するということは、卒業後のキャリアについて大学・岐阜県と約束を交わすことです。入学前にしっかりと理解しておきましょう。
義務年限と指定勤務地
- ・義務年限: 臨床研修2年間 + 専門研修等7年間 = 合計9年間
- ・指定勤務地: 岐阜県が定めるキャリア形成プログラムに基づき、岐阜県内の公的医療機関等(岐阜大学医学部附属病院、県立病院、市町村立病院、へき地医療拠点病院など)で勤務します。
専門医取得までのキャリアパス
義務年限の期間は、キャリアが制限されるだけでなく、岐阜県の手厚いサポートのもとで専門医を目指す期間でもあります。岐阜県が用意する「岐阜県医師育成・確保基本計画」に沿って、様々な診療科で経験を積みながら、専門医資格の取得を目指すことができます。
離脱した場合の奨学金返還
地域枠の学生の多くは、岐阜県の「医学生修学資金」の貸与を受けます。これは月額で10万円(6年間で総額720万円)が貸与される制度で、義務年限を無事に満了すれば全額返還免除となります。
しかし、自己都合で義務を果たせなかった場合や、医師国家試験に不合格となった場合などは、貸与された修学資金に利子を付けて一括で返還しなければなりません。これは非常に重いペナルティであり、強い覚悟を持って出願する必要があります。 (参考:岐阜県 岐阜県医学生修学資金のご案内 https://www.pref.gifu.lg.jp/page/2090.html)
医学部進学にあたっては、地域枠以外にも利用可能な奨学金制度があります。授業料免除や貸与型・給付型奨学金について知りたい方はこちらをご覧ください。
【岐阜大学医学部】よくある質問(Q&A)

最後に、受験生からよく寄せられる質問にお答えします。
他大学の医学部との併願は可能か?
いいえ、できません。 岐阜大学の地域枠は「学校推薦型選抜」であり、この選抜に合格した場合は、入学を辞退することはできません。 そのため、他の国公立大学の学校推薦型選抜との併願は不可能です。
地域枠と一般選抜は併願できるか?
はい、可能です。 岐阜大学医学部の地域枠(学校推薦型選抜Ⅱ)に出願し、万が一不合格となった場合に、同大学の一般選抜(前期日程)に出願することは可能です。地域枠でチャンスを掴みつつ、一般選抜に備えるという戦略を取ることができます。
面接で重視されるポイントは何か?
「地域医療への貢献意欲」と「コミュニケーション能力」です。 学力は共通テストの点数で評価されます。面接では、ペーパーテストでは測れない人間性や熱意が見られます。「なぜ岐阜でなければならないのか」という問いに対して、自分の経験や考えに基づいた説得力のある答えを用意しておくことが、合格への鍵となります。
岐阜大学地域枠は魅力的な選択肢ですが、志望校を選ぶ際には学費や進級率なども含めて総合的に比較検討することが大切です。医学部志望校の選び方を整理したガイドはこちら。
まとめ
岐阜大学医学部の地域枠は、将来、岐阜県の医療を支えたいという強い意志を持つ受験生にとって、非常に魅力的な制度です。
- ・出願資格は厳しいが、条件を満たせば大きなチャンス。
- ・共通テストは8割以上を目標に、面接対策も入念に。
- ・卒業後9年間の義務があり、強い覚悟が必要。
この記事で紹介した条件やボーダー、倍率などのデータを参考に、まずはあなたに出願資格があるかを確認し、家族や先生とよく相談してみてください。その上で「挑戦したい」と決意が固まったなら、ぜひ目標に向かって全力で準備を進めてください。
あなたの挑戦を心から応援しています。
より詳細な情報は、必ず大学公式の募集要項をご確認ください。 「岐阜大学 令和7年度入学者選抜要項」 (参考:https://www.gifu-u.ac.jp/admission/admission/guideline.html)