「医学部合格」という高い目標を掲げるあなたにとって、英語は避けては通れない、そして最も重要な科目の一つです。しかし、多くの受験生が「医学部の英語対策って、何から始めればいいの?」「普通の大学受験と何が違うの?」といった悩みを抱えています。
この記事では、医学部受験に特化した英語の勉強法を、具体的な参考書ルートや英検の活用法まで、網羅的に解説します。
この記事を読めば、あなたの英語学習に関する疑問や不安が解消され、合格への最短ルートが見えてくるはずです。さあ、一緒に医学部合格への第一歩を踏み出しましょう。
医学部入試における英語の重要性と特徴

医学部入試において、英語は単なる一教科ではありません。合否を左右する極めて重要な戦略科目です。まずは、なぜ英語がそれほど重要なのか、その特徴と合わせて見ていきましょう。
合否を分ける配点の高さと合格者平均点
多くの医学部では、理科や数学と並んで英語の配点が高く設定されています。大学によっては、英語の配点が最も高いケースも少なくありません。
そして、医学部合格者の英語の得点率は非常に高く、高得点での争いになるのが一般的です。 英語で大きく失点してしまうと、他の科目で挽回するのは非常に困難になります。つまり、英語は「苦手科目にしない」という守りの姿勢ではなく、「得点源にする」という攻めの姿勢で取り組むべき科目なのです。
医療系長文の専門性と語彙レベルの高さ
医学部英語の最大の特徴は、医療・生命科学系のテーマを扱った長文が出題されることです。具体的には、以下のようなテーマが頻出します。
・最新の医療技術(iPS細胞、ゲノム編集など)
・病気のメカニズムや治療法
・公衆衛生や疫学
・生命倫理
・臨床試験
これらの長文には、専門的な英単語も登場します。しかし、専門用語そのものの知識を問われることは稀で、文脈から意味を正確に推測する読解力が求められます。 そのため、一般的な大学受験対策に加えて、医療系テーマに慣れ親しんでおくことが重要です。
国公立と私立医学部の出題傾向の違い
医学部英語は、国公立大学と私立大学で出題傾向が異なります。
国公立大学
- ・記述問題(和訳、説明問題、英作文など)が中心。
- ・文章の論理構造を正確に理解し、日本語で分かりやすく表現する力が求められる。
- ・試験時間に比べて問題量がそれほど多くない大学が多く、一問一問を丁寧に解く精度が重要。
私立大学
- ・マークシート形式の問題が中心。
- ・膨大な量の長文を速く正確に読む「速読力」と、高度な「語彙力」が求められる。
- ・文法や語法問題の難易度が高い大学も多い。
ただし、これはあくまで一般的な傾向です。志望校の過去問を分析し、個別の対策を立てることが不可欠です。
医学部英語に求められるレベルと難易度
では、具体的にどのくらいの英語力が求められるのでしょうか。
一般的に、医学部合格には英語の偏差値で65以上、難関大学では70以上が目安とされています。これは、英語力の指標であるCEFRでいうとB2〜C1レベルに相当し、英検では準1級から1級レベルの高度な英語力が求められることを意味します。
単に単語や文法を知っているだけでなく、複雑な文章を素早く正確に読み解き、論理的に思考し、表現する総合的な力が試されるのです。
医学部英語の分野別勉強法

医学部英語を攻略するためには、分野ごとに適切なアプローチで学習を進める必要があります。ここでは、「英単語」「英文法・語法」「英文解釈」「長文読解」「英作文」の5つの分野に分けて、効果的な勉強法を解説します。
英単語の覚え方とおすすめ単語帳
医学部受験の英単語学習は、盤石な基礎語彙力の上に、医療系単語の知識を上乗せすることが基本戦略です。
まずは、大学受験用の標準的な単語帳を1冊完璧に仕上げましょう。『システム英単語』や『ターゲット1900』などが定番です。1つの単語につき1つの意味を覚えるだけでなく、派生語や多義語までしっかり押さえることが、読解の精度を上げます。
その上で、医療系テーマの長文に備えるため、専門単語帳を追加するのがおすすめです。
【おすすめの単語帳】
①システム英単語
頻出度順に掲載されており、ミニマルフレーズで効率的に覚えられます。
②ターゲット1900
こちらも頻出度順。例文がシンプルで、単語の使われ方をイメージしやすいのが特徴です。
③鉄緑会東大英単語熟語 鉄壁
語源やイラストを用いて記憶に残りやすい工夫がされており、語彙を体系的に増やしたい受験生におすすめです。
④医学部の英単語
医学部入試に特化した単語帳。医療系のテーマに慣れる上で非常に役立ちます。基礎的な単語帳を終えた後に取り組むと良いでしょう。
英文法・語法の完成度を高める学習法
英文法・語法は、正確な読解と英作文の根幹をなすため、一切の穴があってはなりません。 感覚で解くのではなく、なぜその答えになるのかを論理的に説明できるレベルを目指しましょう。
網羅系の参考書を1冊決め、何度も繰り返し解いて完璧にすることが最も効果的です。間違えた問題には必ず印をつけ、定期的に復習する習慣をつけましょう。
【おすすめの文法・語法書】
①Next Stage 英文法・語法問題
左ページに問題、右ページに解説という見やすいレイアウトで、多くの受験生に支持されています。
②Vintage 英文法・語法
Next Stageと同様に網羅性が高く、解説が詳しいのが特徴です。自分に合う方を選びましょう。
精読力を鍛える英文解釈のトレーニング
一文一文の構造(SVOC)を正確に把握し、日本語に訳す「精読力」なくして、難解な医学部長文を読みこなすことは不可能です。
英文解釈の参考書を使い、複雑な構文の文章をじっくりと分析するトレーニングを積みましょう。最初は時間がかかっても構いません。品詞分解や構文把握を丁寧に行うことで、徐々に正確かつスピーディーに読めるようになります。
【おすすめの英文解釈書】
①入門 英文解釈の技術70
英文解釈の初学者向け。基本的な構文を丁寧に解説しており、基礎固めに最適です。
②ポレポレ英文読解プロセス50
やや難易度は高いですが、思考のプロセスを学べる良書。国公立の和訳問題対策にも繋がります。
長文読解の速読力と解答力を上げるコツ
精読のトレーニングで土台ができたら、次は長文読解の演習を通して「速読力」と「解答力」を鍛えていきます。
速読力を上げるコツは、意味の塊(チャンク)で捉えることと、文章全体の論理構造を意識することです。 「しかし(However)」などのディスコースマーカーに注目し、筆者の主張や対比関係を把握しながら読み進める練習をしましょう。
また、ただ読むだけでなく、設問を解く練習も重要です。選択肢問題、内容説明問題、和訳問題など、形式ごとに解き方を確立していきましょう。
【おすすめの長文問題集】
①やっておきたい英語長文シリーズ(300/500/700/1000)
レベル別に分かれており、ステップアップしやすい構成です。
②大学入試問題集 関正生の英語長文ポラリスシリーズ
論理的な読解法を学べる解説が人気です。
自由英作文・和文英訳の対策方法
英作文は、多くの受験生が苦手とする分野ですが、対策すれば安定した得点源になります。
英作文対策の基本は、「減点されない答案」を作ることです。 難しい構文や単語を使おうとせず、自分の知っている表現でミスなく書くことを心がけましょう。
【効果的な対策】
①基本例文の暗唱
様々なテーマで使える便利な表現をストックしておきましょう。『英作文ハイパートレーニング』シリーズなどがおすすめです。
②第三者による添削
英作文は、学校の先生や予備校の講師など、第三者に添削してもらうことが必須です。自分では気づけない文法ミスや不自然な表現を指摘してもらうことで、答案の質が格段に向上します。
【レベル別】医学部英語のおすすめ参考書ルート

ここでは、あなたの現在のレベルに合わせて、具体的な参考書の進め方(ルート)を提案します。
基礎固めステージの参考書ルート
英語に苦手意識がある、または高校の基礎から復習したい受験生向けのルートです。
- 【英単語】
- ・『システム英単語Basic』または『ターゲット1400』
- 【英文法】
- ・『大岩のいちばんはじめの英文法【超基礎文法編】』
- 【英文解釈】
- ・『入門 英文解釈の技術70』
- 【長文読解】
- ・『英語長文ハイパートレーニング レベル1』
標準・応用レベルの参考書ルート
大学受験の標準的なレベルを固め、医学部入試レベルへと引き上げていくルートです。
- 【英単語】
- ・『システム英単語』または『ターゲット1900』
- 【英文法】
- ・『Next Stage』または『Vintage』
- 【英文解釈】
- ・『ポレポレ英文読解プロセス50』
- 【長文読解】
- ・『やっておきたい英語長文500/700』
- ・『大学入試問題集 関正生の英語長文ポラリス2 応用レベル』
- 【英作文】
- ・『英作文ハイパートレーニング 和文英訳編』
志望校特化・過去問演習ステージ
応用レベルの参考書を終えたら、いよいよ志望校対策です。
- 【英単語】
- ・『医学部の英単語』
- 【長文読解】
- ・『やっておきたい英語長文1000』
- ・『国公立大学・私立大学医学部入試問題と対策』(教学社)
- 【英作文】
- ・『英作文ハイパートレーニング 自由英作文編』
- 【過去問】
- ・志望校の赤本を最低でも10年分は解き、出題傾向、時間配分、難易度を徹底的に分析しましょう。
参考書選びで失敗しないための注意点
医学部受験における“英語の参考書選び”で失敗しないための注意点には、主に以下の3つがあります。
自分のレベルに合ったものから始める
背伸びして難しい参考書に手を出しても、消化不良になるだけです。簡単なレベルから着実にステップアップすることが、合格への一番の近道です。
何冊も浮気しない
不安から色々な参考書に手を出すのはやめましょう。決めた1冊を何度も繰り返し、完璧に仕上げる方が何倍も効果的です。
解説の詳しいものを選ぶ
なぜその答えになるのか、プロセスを丁寧に解説してくれる参考書を選びましょう。自学自習の質が大きく変わります。
英検は医学部受験で有利?活用できる大学一覧

近年、医学部入試で英検などの英語外部試験を利用できる大学が増えています。うまく活用すれば、受験を有利に進めることが可能です。
多くの大学で有利な評価を得るには、英検準1級以上の取得が一つの目安となります。
英検が出願資格になる大学
一部の大学では、推薦入試や一般入試において、英検の特定の級を持っていることが出願の条件になっています。
- 【主な大学例】
- ・筑波大学(医学類・推薦)
- ・群馬大学(医学部・推薦)
- ・獨協医科大学(医学部・公募推薦)
- ・埼玉医科大学(医学部・推薦)
必ず最新の募集要項を大学公式サイトで確認してください。
英検で得点加算・みなし得点になる大学
取得している級やCSEスコアに応じて、個別の英語試験の点数に加算されたり、満点や高得点とみなされたりする制度です。これは受験生にとって非常に大きなアドバンテージになります。
- 【主な大学例】
- ①得点加算
- ・順天堂大学(医学部)
- ・東北医科薬科大学(医学部)
- ②みなし得点
- ・藤田医科大学(医学部)
- ・国際医療福祉大学(医学部)
- ・金沢医科大学(医学部)
- ①得点加算
目指すべき英検の級とスコアの目安
医学部受験で有利に働くのは、基本的に「英検準1級」以上です。 難関大学や、より高い評価を得たい場合は「英検1級」を目指す価値があります。
また、近年は級だけでなく、4技能(リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング)の能力を数値化したCSEスコアを重視する大学も増えています。出願条件として、級だけでなく特定のスコアを求められる場合もあるため、注意が必要です。
藤田医科大学・順天堂大学の英検利用例
英検が有利になる分かりやすい例として、藤田医科大学・順天堂大学の利用例を見ていきましょう。
藤田医科大学
藤田医科大学では、英検などの英語外部試験のスコアに応じて、大学入学共通テストの「外国語」の得点に換算されます。例えば、英検準1級に合格していれば、共通テストの英語が満点の200点とみなされるなど、非常に有利な制度です(年度により基準は変動します)。 (参考:藤田医科大学 入試情報サイト)
順天堂大学
順天堂大学の一般選抜(A方式)では、英検準1級以上の資格・スコアを証明する書類を提出すると、個別学力試験の英語の得点に1点が加算されます。 1点の差が合否を分ける医学部入試において、この加点は大きな意味を持ちます。 (参考:順天堂大学 医学部入試情報)
医学部英語対策の年間学習計画モデル

合格から逆算して、いつ、何をすべきかを知っておくことは非常に重要です。ここでは、高3生をモデルとした年間の学習計画を紹介します。
受験前期(〜高3夏休み)の学習計画
この時期の目標は、英語の基礎を徹底的に固めることです。
- ①英単語・熟語
- 受験で使う単語帳を1冊決め、毎日コツコツ進める。夏休み終了までに8〜9割は覚えるのが目標。
- ②英文法・語法
- 網羅系の参考書を最低でも2周は終わらせ、苦手分野をなくす。
- ③英文解釈
- 解釈の参考書を1冊仕上げ、複雑な構文でもSVOCを正確に把握できるようにする。
受験中期(高3秋)の学習計画
基礎力を土台に、長文読解や英作文などの演習量を増やし、応用力を養う時期です。
- ①長文読解
- 標準〜応用レベルの長文問題集に毎日取り組む。時間を計って解き、速読力を意識する。
- ②英作文
- 基本的な例文の暗唱を進めるとともに、週に1〜2題は実際に書いてみる。書いた答案は必ず添削してもらう。
- ③過去問研究
- 志望校の過去問を数年分解いてみて、出題傾向や自分に足りない力を分析する。
受験直前期(冬〜入試本番)の学習計画
志望校対策に特化し、本番での得点力を最大化させる最終調整の時期です。
- ①過去問演習
- 志望校や併願校の過去問を、本番と同じ時間設定で解く。時間配分の戦略を確立する。
- ②知識の総復習
- これまで使ってきた単語帳や文法書を何度も見返し、知識の漏れがないか最終確認する。
- ③体調管理
- 万全のコンディションで本番を迎えられるよう、生活リズムを整えることも重要な対策の一つです。
医学部受験の英語に関するQ&A

最後に、医学部受験生からよく寄せられる英語学習に関する質問にお答えします。
1日の英語の勉強時間はどれくらい必要ですか?
A. 平日で2〜3時間、休日で3〜4時間を目安に確保するのが理想です。 ただし、重要なのは時間だけでなく「質」です。毎日英語に触れる習慣をつけ、集中して学習することが大切です。理科や数学とのバランスも考えながら、自分に合った計画を立てましょう。
医学部専門予備校の英語対策は有効になりますか?
A. 非常に有効な選択肢の一つです。 医学部専門予備校は、各大学の最新の入試情報や、医学部特有の出題傾向に関するノウハウを豊富に持っています。質の高い添削指導や、同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨できる環境も大きなメリットです。費用はかかりますが、独学に不安がある場合は検討する価値があります。
英語が得意でも医学部対策は必要でしょうか?
A. はい、必ず必要です。 「英語が得意」なことと、「医学部入試で合格点を取れる」ことはイコールではありません。 医療系の専門的な長文や、大学独自の癖のある問題形式など、医学部入試に特化した対策をしなければ、思わぬところで足をすくわれる可能性があります。得意だからこそ、過去問演習などを通して万全の対策をしましょう。
英語が苦手な受験生の逆転戦略があれば知りたいです。
A. 焦らず、基礎に立ち返ることが最も重要です。 英語が苦手な場合、応用問題に手を出しても効果は薄いです。まずは中学レベルの文法や単語に不安があれば、そこから復習しましょう。単語・文法・英文解釈の土台を固めることが、結果的に長文読解力の向上に繋がります。 基礎を固め、簡単なレベルの長文から少しずつステップアップしていけば、必ず成績は伸びます。諦めずに粘り強く取り組みましょう。
また、伸び悩みの原因を自己分析し、苦手分野を特定できているのであれば、必要に応じて家庭教師を活用するのも効果的です。特に医療系長文や英作文など、専門的な指導が求められる領域では、マンツーマン指導の効果が高く、効率的な学習が可能になります。
当社、学研の家庭教師のプロ家庭教師コースでは、医学部入試を熟知した講師が一人ひとりに最適な学習計画を作成し、合格までマンツーマンで伴走。医療系長文や英作文はもちろん、受験期のメンタルサポートまで一貫して行い、お子さんの夢を全力で後押しします。
まずは無料の学習相談で、現状の課題と今後の展望を一緒に考えてみましょう。
まとめ
今回は、医学部受験における英語の重要性から、具体的な勉強法、おすすめの参考書ルート、英検の活用法までを詳しく解説しました。
最後に、この記事の要点をまとめます。
①医学部英語は配点が高く、高得点勝負になる最重要科目
②医療系長文への対策と、高度な語彙力・速読力が求められる
③「単語・文法・解釈」の盤石な基礎の上に「長文・英作文」の演習を積む
④自分のレベルに合った参考書を1冊ずつ完璧に仕上げていく
⑤英検準1級以上は、出願や得点加算で有利になる可能性がある
⑥年間計画を立て、時期ごとに適切な学習を行うことが合格の鍵
医学部への道は決して平坦ではありません。しかし、正しい戦略と継続的な努力があれば、必ず道は拓けます。
この記事を参考に、今日からあなたの英語学習をアップデートし、医学部合格という夢を掴み取ってください。 応援しています!